本当は、このことは書かないつもりでいた。
だけれども、書かなければ、いつまで経っても前に進めない。
そんな気がした。だから、書くことにした。
高校時代は、何ひとついいことがなかった。
今でも、あんな高校、通わなければよかった、と思っている。
あたしが通った高校は、
地元では中堅進学校だったけれども、
頭がいい訳でもなければ、手に職が付く訳でもない。
わざわざ往復三時間掛かる学校に入ったのに、
入学式の次の日からクラスメイト全員に仲間外しにされた。
中学校から女子は一人だけで、知らない人しかクラスにいない。
どうしてあたしだけ仲間外しにされるのか、わからなかった。
昼休み、弁当を食べたり、おしゃべりをするときも、
何かのグループを作るときも、誰ひとりあたしを入れてくれる人はいない。
勇気を出して、あたしから入ろうとすると、みんなあたしを避けた。
いたずらの濡れ衣を着せられたり、物を壊されたことも多々あった。
重要なプリントがあたしにだけ配られなかったり、
「あいつウザい」「学校来ないで」「いつ学校辞めてくれるの?」
などの冷たい声が自分の胸を突き刺すこともあった。
こんな学校、早くやめたい、常々そう思っていた。
担任に相談したけれども、
「うちのクラスはみんないい人ばかりです」
とだんまりだった。
こんな学校、やめてやると思った。
だけれども、やめられなかった。
ここでやめたら、あいつら全員に負けることになる。
勝てなくてもいい、でも負けたくない。
誰ひとり味方がいない中で、心で泣きながら通い続けた。
みんながあたしを嘲笑った。
やがて、二年になった。メンバーは変わっても、状況は変わらなかった。
それどころか、さらに酷くなった。
相変わらず、誰ひとり入れてくれなかったし、
クラスの一員としても見てもらえなくなっていた。
文化祭も体育祭も、あたしひとりだけが何ひとつ役割を与えてもらえなくて、
何かをさせてもらおうと、勇気を出して直談判しても、
「なに出しゃばってんの?」
の一言で片付けられた。
掃除の時間、グループのみんながサボっていて、
自分だけ掃除をしていたら、みんなが陰口を言っている。
その姿を見た担任は、
「みんながサボるときにはあなたもサボっていいのよ」
と、笑いながら言っていた。
こんな学校、やめてやると思った。
だけれども、やめられなかった。
ここでやめたら、あいつら全員に負けることになる。
勝てなくてもいい、でも負けたくない。
誰ひとり味方がいない中で、心で泣きながら通い続けた。
みんながあたしを嘲笑った。
担任にまで来るなと言われた。
他の教師は白い目で見ていた。
それでも通った。
ここでやめたら、あいつら全員に負けるような気がして、
やめられなかった。
あまりに苦し過ぎて、勉強も手につかなくて、
家が遠いから部活にもなかなか出られなくて、
ただ通うだけの三年間だった。
ようやく三年が経ち、卒業式の日がやってきた。
クラスメイトのみんなは、
友との別れを惜しみ、号泣していたのだけれど、
あたしは式の最中、涙ひとつ出なかった。
これまで溜まっていた何かが、一気に吹き出てきて、
途中でうとうと眠ってしまった。
そして、校門を出た途端、笑いそうになった。
あの日から十年が経つのだけれど、
未だに忘れられない。
履歴書にあの学校の名前を書いたら、
面接官に大笑いされ、
事務をしたら、接客をしたら、工場作業をしたら、
商業高校を出ていないから、
レベルの低い学校だから、
高校時代にアルバイトをしていないから、
何処に行っても、言われ続けた。
あの三年間は何だったのだろう。
あんな学校、通わなければよかった、
そんな思いが、さらに募った。
制服はヤフオクで売り払い、
卒業アルバムは燃やして捨てた。
教科書も、ノートも、体操着も、
全部全部切り刻んだ。
あの三年間の記憶を消そうとして。
どれだけ消そうと頑張っても、
あの三年間の記憶は消えなかった。
今の自分はどうなのだろうか。
仕事に負けようとしている、
職場に負けようとしている、
簡単にやめようとしている。
それを繰り返す、あたしがここにいた。
あの頃と一緒で、
今だってひとりで戦っている。
あの頃と一緒で、
毎日心で泣きながら通っている。
勝てなくてもいい、負けたくない。
それなのに、あいつら全員ではなく、
あの頃のあたしにも負けそうな気がした。
あの嘲笑う奴らと一緒になって、
あたしも嘲笑っているような気がした。
勝てなくてもいい、負けたくない。
だから、通う。仕事に通う。
いつだってひとりで戦っている。
勝てなくてもいい、負けたくない。
だから、戦う。ひとりで戦う。
(2013年8月1日)
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